PDF版はこちら →ひろよしくんのみみ 2025年3月号
~ 事業構造改革で成功する秘訣はこれだ!!~
先月、宝塚市民病院建て替えに254億円の寄付を申し出た岡本光一氏の記事が報道されました!!岡本氏は、キーエンス創業期のメンバーで技術屋。キーエンス株式のストックオプションが膨れ上がり、保有株式の時価総額は何と1,800億円!!その一部を寄付にあてたものです。きっかけは阪神淡路大震災でボランティア活動に参加したことで、福祉、地域コミュニティーの重要性を実感!!福祉財団設立に過去にも37億円の私財を投じておられます。岡本氏の自利利他の精神は本当に凄いと思います!!
今月は、事業ビジネスが大きく変わろうとしている昨今、事業の再構築を如何に成功させるかについて、日経ビジネス12月4日号から富士フイルムを取り上げました。フィルム業界で常にトップを走っていたコダックが、スマホ・デジタルカメラの普及で倒産したことは記憶にあるかと思います。そのフィルム業界で日本のトップシェアであった富士フイルムも同じで、2000年から10年間で需要は10分の1まで低迷。この窮地に完全と立ち向かったのが、前会長の古森重隆氏でした。
その内容は、富事業ポートフォリオを、市場の魅力度(成長性などを勘案)から「基盤事業」「成長事業」「新規/次世代事業」「価値再構築事業」の4つに分類し、新旧事業を織り交ぜ改革を断行しています。
4つの事業部門が上手く融合し、合計で3,164億円の営業利益を出しているのは、素晴らしいです。(富士フイルムは、売上高は3期連続、営業利益は4期連続で過去最高!!)
価値再構築事業では、フィルム部門で過去に販売していたチェキの再生を若手中心に編成替え、デザインを一掃するとともに、2018年から米国歌手テイラー・スウィフト氏をプロモーションに活用。コンサート会場でチェキ(その場ですぐにプリントできるインスタントカメラ)のブースを作り、彼女にチェキの魅力を発信させて一気に知名度がアップ!!現在、売上の9割が海外になっています。
更に富士ゼロックスの再生は、ペーパーレス化が進む中、用紙の復活は難しいと考え、DX化の支援に経営資源を投入!!現在紙で管理しているデータを、ロボットがホッチキスを外し、AIが書類を整理・投影、テキストデータとして整理・保存が出来るシステムを開発し、銀行や官公庁に導入を進めています。
ヘルスケア部門と富士フイルムとの関係というとピンとこないかも知れませんが、レントゲンで使うフィルム画像処理は従来から富士フイルムが使われていて、実は親和性が強い事業です。従来、レントゲン、胃カメラ、CTはフィルムを印刷し、医師が読影して保存していました。しかし、心臓の動きなどで撮影時に微妙なズレが生じることがあるという点に着目し、最新鋭の画像解析技術PACSを開発。現在国内で約3,400、世界で約5,800の医療機関に導入されています。医療AI市場は、24年度は58億ドル、5年後の2029年には204億ドル(約3兆1千億円)になると言われており、市場拡大に応じ投資を集中させているのは流石です。
この医薬マーケットに目をつけ、進めているのがバイオ医薬のTSMCを目指す新薬受託製造部門。新薬は【研究開発】➡【治験】➡【承認申請】➡【商業生産】というプロセスで完成しますが、富士フイルムは研究開発(R&D)から商業生産まで一貫して支援を行い、先行するロンザやサムスンバイオに追い着け追い越せで事業を進めています。
そして、次世代新規事業を担うのが、半導体材料部門。半導体はシリコンウェハーに回路パターンを焼き付けて作成していきますが、ここでも自社の現像技術を活用し、「ネガ型」という微細な加工が出来る露光装置を開発し、後発ながら商機を掴みつつあります。
富士フイルムの事業再構築は、①常に市場が拡大する分野で行う事、②自社の強みを生かせる分野で行う事を念頭に、STPDサイクルを回して進めていることが分かります。