【2025年3月】2025年度より法定休暇日が増加~給与計算や有給休暇取得にかかる影響の有無について~

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2025年度は、2024年11月に公布された国務院令第795号[i]の改正 に基づき、法定休暇日が従来よりも2日増加し、計13日になりました。これを受けて2025年1月1日より、人社部発「2025」2号[ii]が公布・施行され、従業員の年間、月間等の平均労働時間や、最新の月給、日給等の賃金の算定方法が確定しました。

労働日数や平均労働時間、また賃金の算定方法は、従業員給与に影響する重要事項です。本稿では、これらの規定の施行による影響に加えて、中国からの撤退時に争点となり得る年次有給休暇の取扱いも含めて解説します[iii]

  1. 1.国務院令第795号の改正内容
    法廷休暇日 日数
    元旦
    春節
    清明節
    労働節
    端午節
    中秋節
    国慶節
    合計
    1日
    4日(+1)
    1日
    2日(+1)
    1日
    1日
    3日
    13日(+2)
    1. 国務院令第795号は法定休暇日と記念日[iv]の取扱いを定めており、法定休暇日は2025年1月から右表の通り、13日(+2日)となりました。
      併せて、本改正では、“全国民の休日は、合理的に調整され、年次有給休暇やその他の制度の実施と組み合わされて、実際には、より長い休日が形成される可能性があり”、“特別な事情を除いて、法定休暇日前後の連続した出勤は通常6日を超えない”との条項が追記されました。

 

 

 

  1. 2.人社部発「2025」2号の公布・施行
    1. 上記1の法定休暇日の増加を受け、就業者の平均労働時間と賃金の算定方法に関し、下表の通り、2025年1月1日より人社部発「20252号が施行され、旧規定(労社部発「2008」3号[v])は廃止されました。
      現行(人社部発「2025」2号) FYI社部発「20083
      (1)
      労働日数、時間の
      計算方法
      ➢年間労働日数:248日
       =365日-104日(休息日)-13日(法定休暇日)
      ➢ 四半期労働日数:62日
       =248日÷4四半期
      ➢月間労働日数=20.67日
       =248日÷12月
      *労働時間数の計算:月間、四半期、年間の労働日数×8時間(1日当たり)
      ➢年間労働日数:250
       =365-10411
      ➢四半期労働日数:62.5
       =250日÷4四半期
      ➢月間労働日数20.83
       =250÷12
      *労働時間数の計算:

      同左 

      (2)
      日給、時給の
      計算方法
      労働法[vi]に従い(中略)、雇用企業は給与を支払う。則ち、日給や時給の計算に、13日の法定休暇日を除外せず、以下の通りに算定:
      ➢日給:月給収入÷月間給与支払日数(以下“月給日数”)
      ➢時給:月給収入÷(月給日数×8時間)
      ➢月給日数: (365日 – 104日) ÷ 12か月 = 21.75日
      同左。則ち、日給や時給の計算に、11日の法定休暇日を除外せず以下の通りに算定:
      ➢日給:同左
      ➢時給:同左
      ➢月給日数:同左
    1.  上表(1)の通り、労働時間の計算方法に変更が加えられ、企業が定める所定労働時間の上限値は以下となります(所定労働時間の超過部分が時間外労働(残業)となります。
    2. ➢年間労働時間:8時間×248日=1984時間  /  四半期労働日数:8時間×62日=496時間
      ➢ 月間労働日数=8時間×20.67日=165.36時間
    3. 尚、日本と同様に、中国労働法等にも労働時間の定めがあります(原則、1日8時間/週平均40時間、残業は月間36時間を超えない[vii]等と規定)。
    4. 一方、上記(2)の日給、時給の算定方法では労働法の現行条項を維持し、”労働者の法定休暇日、婚姻・忌引休暇及び法定の社会活動参加期間に対して雇用企業は法定賃金を支払う(則ち、有給扱い)”として、労働日数から法定休暇日を控除しない為、現行も月間の給与日数は21.75日であり、時給も変化しません

 

  1. 3.関連事項および留意事項
    1. (1)3種類の労働時間制度と残業代
      1. 中国の勤務制度には、①標準労働時間制と、業務の特性において標準的な勤務形態が実施できない際の変形労働時間制(下記②、③)があり、後者は労働行政部門の許可を経て導入が可能です[viii]
      2. ①標準労働時間制:中国現地法人の標準的な勤務形態です。この場合、上述の通り、日給や時給の計算方法に変更が生じない為、給与や残業代の計算方法に特段影響はないものと思われます。
      3. ②不定時労働制:日本の裁量労働制[ix]に相当する、標準労働時間制の適用が難しい変則的な勤務形態を前提とする為、同様に本改正の影響を特段、受けません。但し、高級管理職や営業職、タクシーや長距離運転手など、職級や職種が限定されます。
      4. ③総合計算労働時間制:例えば、交通、航空、漁業や建築、旅行など、業務の特殊性により連続して業務を行う等に制限的に用され、週、月、四半期、年を単位として平均し、一周期内で所定労働時間の超過勤務に対して残業代を支払う建付けですが、例外的な勤務形態と言えます。
      5. 尚、残業代を支払う場合、以下が下限となります。
      6. ➢通常勤務日の残業:時給×150%
        ➢休日出勤(代休が手配できない場合):時給×200%
        ➢法定休假日(代休での代替不可):時給×300%

 

    1. (2)年次有給休暇の取扱い
      1. 国務院第514号[x]に規定する“法定休暇日は年次有給休暇に算入しない”との取扱いに変化がありませんが、右表や以下等が注意点となります。
        【年次有給休暇の年間付与日数】
        累計勤務年数 日数
        ➢1年以上10年未満
        ➢10年以上20年未満
        ➢20年以上
        5日
        10日
        15日
      2. ➢原則、年次有給休暇は一年度内に取得(但し、生産、作業の特性により次年度への繰越の手配が可能)
      3. ➢業務の要因により従業員の年次有給休暇を手配できない場合、日給×300%を支給(但し規定上は、従業員本人の承諾を経れば、従業員に年次有給休暇を手配しなくても可)
      4. また、付与日数は、前職以前を含む累計勤務年数により計算[xi]しますので、留意が必要です。
    2. 上述の通り、本稿で取上げた規定の施行による影響は限定的ですが、現地法人運営にとり適切な給与(残業代を含む)計算や勤怠管理が必要なことは言うまでもありません。しかし昨今、中国市場からの撤退(清算/持分譲渡等)時に、残業代の過少・未払いや、個人所得税額の社会保険料の過少・未納などへの対応を求められる例が見受けられ、この際には未消化の有給休暇の取扱いも重要となります。従い、適切な経営管理の観点から、改めて、上記を含めた適正な労務管理が肝要と考えます。

 



[i] 原文URL:中华人民共和国国务院令(第795号)  国务院关于修改《全国年节及纪念日放假办法》的决定  全国年节及纪念日放假办法__2024年第33号国务院公报_中国政府网

[ii] 原文URL:人力资源社会保障部关于职工全年月平均工作时间和工资折算问题的通知_国务院部门文件_中国政府网

[iii] 本稿の関連トピックとして華南通信【2025年1月号】を、また撤退関連はJPマイツ通信【2024年11月号】、後述の年次有給休暇関連は中国人事労務通信【2024年10月】等を併せてご参照頂きたい。URL:ニューズレター アーカイブ| 株式会社マイツ

[iv] 記念日(婦人節ほか)の取扱いは本改正では変更がなく、第3条等を参照のこと。

[v] 原文URL:关于职工全年月平均工作时间和工资折算问题的通知_中华人民共和国人力资源和社会保障部

[vi] 第51条を参照のこと。原文URL:中华人民共和国劳动法_中华人民共和国人力资源和社会保障部

[vii] 労働法(36条、41条)、《国务院关于职工工作时间的规定》を参照のこと。

[viii] 原文URL:关于企业实行不定时工作制和综合计算工时工作制的审批办法_中华人民共和国人力资源和社会保障部

[ix] 詳細は、右記URL等を参照のこと。URL:裁量労働制の概要 |厚生労働省

[x] 原文URL:职工带薪年休假条例_国务院文件_中国政府网

[xi] 第4条を参照のこと。原文URL::企业职工带薪年休假实施办法(人力资源社会保障部令第1号)_中华人民共和国中央人民政府门户网站