【日中クロスボーダーM&Aコラム】債務免除益計上の留意点

日中クロスボーダーM&Aコラム

 

「債務免除益計上の留意点

 

Q:弊社は持分譲渡の方式で子会社の撤退を考えていますが、その際に子会社の債権を事前に放棄し簿価純資産を高める予定です。子会社で債務免除益を、親会社で貸倒損失を計上する場合の留意点を教えて下さい。

 

A:子会社側では、債務免除益を計上する事で納税が発生する事がないか?親会社では、貸倒損失が税務上否認される事がないか?十分なチェックが必要です。

解説:

1.子会社の留意点

持分譲渡を行うに際し、買手から事前に関係会社間の債権債務を整理しておいて欲しいという要求があります。また、債務免除益を計上する事で簿価純資産を高めるというメリットもあります。ここで税務上確認しておかなければならない点は、債務免除益を計上した時に繰越欠損金の控除限度額を超え納税が生じないか事前にチェックを行っておく必要があります。

2.親会社の留意点

日本の法人税では、関係会社間の資産の整理に伴う損失の計上は関係会社間の寄付金をして取り扱われ、会計上損失処理は可能でも税務上は損金として認められません。

但し、一定の条件を満たす場合には、寄付金(貸倒損失否認)に該当しない取り扱いをしています。(法基通9-4-1、9-4-2)

一定の条件とは、

①子会社の解散、経営権譲渡に伴う債権放棄である事
②子会社の損失負担をしなければ、今後より大きな損失を被る事
③②となる事が社会通念上明らかであると認められる事
④その為、やむを得ず損失負担を行う事
⑤④の損失等に至った事に相当な理由がある事

 

法人税基本通達から判断すると、持分譲渡を行うので①は事実ですので問題ないかと思いますが、その他の②~⑤に関しては、“子会社が長年にわたって損失を計上しており、債務超過に陥っている”、そして、“その状況が今後も改善される余地がないと判断されるかどうか”をシッカリと詰めておく必要があるかと考えます。

特に、直近で増資を行っている場合、増資の実行は将来事業が好転するので行ったとみなされる可能性があるので、ご注意ください。