【日中クロスボーダーM&Aコラム】日中間M&Aの価格交渉について

日中クロスボーダーM&Aコラム

 

「日中間M&Aの価格交渉について

 

Q:中国のM&Aにおいて、買手先との交渉の留意点を教えて下さい 。

 

A:M&Aにおいては、買手企業との交渉は、ディールがブレークする事がないよう、譲渡企業の価格算定根拠のデータを開示し、根気よく交渉する事が大切です。

解説:

中国現地法人が譲渡希望企業、中国内資企業が買手の場合の価格交渉について考えてみます。

1.中国の経済環境を考慮

2024年の中国の経済環境はコロナ以降、減速傾向にあり、まだら模様が続いています。EV車関連業界や高科学技術関連分野の業界(特に半導体)では好景気が続いていますが、不動産関連業界の不況、それに伴う将来の不透明感から、飲食・小売りなどもダメージを受けています。譲渡希望企業の業界をチェックし、更に拡大を考える業界かどうかを先ず判定する必要があります。

2.売手・買手の考え方

M&では、売手は出来るだけ高く売り投資資金を回収したい。買手は出来るだけ安く購入し投資額を抑えたいと考えています。売手側からすれば、譲渡希望金額の算定根拠を明確にし、それを買手に開示する事が先ず交渉のスタートになります。

譲渡価額の算定には、時価純資産法、収益還元価値法、年買法、EBITDA法などが採用されますが、即物思考が強い中国買手企業では、原則時価純資産法が採用される事が多いです。譲渡希望企業は、土地使用権の時価評価による置き換え、顧客資産、人材資産等を加算して譲渡希望価格を算定しますが、買手側は、財務・税務、法務・労務DD(デューデリジェンス)を行い、この結果による価格ダウンを求めて来ます。

3.買手との交渉での留意点

買手がLOI(基本合意書)を締結し各種DDを行っているわけですから、買手は納得できる金額であれば買う意思がある事を前提に、譲渡者側が算定している根拠を懇切丁寧に説明し理解を求める事が肝要です。