日中クロスボーダーM&Aコラム
「買手が不要不急とする資産・負債の事前処分」
Q:弊社は中国現地法人の持分譲渡を進めています。買手候補は、事業内容が違う為、不要・不急の資産及び負債は持分譲渡までに譲渡者側で処分をして欲しいと言われています。どの様に対応すれば良いでしょうか?
A:譲渡者側で、売掛金の回収、在庫、機械装置等の転売、負債の支払いを進めて行く事になります。
解説:
1.買手候補の購入要因
持分譲渡が実行される場合、同業者、事業の川上、川下会社が買手候補であれば、当該事業をそのまま継続してくれますが、立地条件や土地使用権、建物に興味を示す持分譲渡では、他の資産・負債は不要・不急なものとなり、買手候補からすれば事前に処分を要求して来る事は多々あります。
2.不要・不急資産換価処分、債権債務の処理を通じた極大化を考える
不要・不急の資産は処分の方法によって譲渡者に大きな価値を生み出す事もあります。
- 在庫の処分:自社グループ内の他の工場で使える様な棚卸資産は、出来るだけグループ間で活用を出来ないか検討します。製品であれば本社が引き取る事も検討します。
- 機械装置も同様に、中国国内にある他の関係会社で使う事がないか?同業で当該機械装置を欲しがっている会社がないか検討しても良いかと思います。(商社への打診なども要検討)
- 無形資産は、転売できないかどうかを検討します。(特に、中国は許可制の生産技術が多くありますので、意外な無形資産が価値を創生する事があります。メッキ事業の許可や塗装関係の許可など)
- 赤字企業で親会社から債務免除を受けられる場合には、計上した免除益の金額だけ、簿価純資産の価値を高く出来ます。
- 中国の商事時効は3年です。3年を徒過している債務を雑収益計上し、簿価純資産の価値を高くする事が出来ます。
3.みなし土地増値税の課税を受けないように注意!!
持分譲渡時点で、資産が土地使用権、建物だけになっていると、みなし土地増値税の課税を受ける恐れがあります。事前に、譲受者側が購入後の事業計画を作成しておくことが必要です。