日中クロスボーダーM&Aコラム
「中国の資産評価方法<DCF法>」
Q:中国の資産評価方法のうち、DCF法について、教えてください。
A:中国においても、DCF法は時価純資産法と同じく最もよく使用されている評価方法の一つであり、基本的な考え方も、日本のDCF法と同様です。
解説:
中国のM&Aでは、時価純資産法に代表されるコストアプローチと共に、インカムアプローチの一つであるDCF法(Discounted Cash Flow Method)が、良く用いられています。
具体的には、企業が将来獲得すると期待されるフリーキャッシュフロー(FCF)を予測し、当該キャッシュフロー金額を、現在価値に割引して、その合計額を企業価値とします。通常、日中クロスボーダーM&Aにおいても対象期間を3年~5年を主体に算出するケースが多い点は、日本と同様です。
割引率にはWACC(加重平均資本コスト)という、株主資本コスト(配当支払いなど株主に対する資金調達コスト)と負債コスト(借入や社債などの調達コスト)の加重平均を用いることが一般的です。
中国のクロスボーダーM&Aにおいても、DCF法を用いる例として、スタートアップ企業や成長企業などが挙げられ、その将来の成長やリスクを考慮して、現在価値を算出します。また、安定したキャッシュフローを有する企業もDCF法の採用に適しています。従い、これらの企業にはDCF法を採用するメリットが大きいと言えます。
一方で、売手側が提出する事業計画等に基づきFCFを算出する為、事業計画等の精度が低いと評価結果も不正確となり、本来の評価額から乖離するリスクが増す点も、日中で差異がありません。
このように、基本的な考え方やDCFを用いるリスクは、日本のDCF法と同様であり、時価純資産法と共に、良く用いられるトレンドにあります。