【2024年7月】勝手に会社印を使用したことを理由に解雇できるか

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1 勝手に会社印を使用する社員がいる

私が受けた相談を受けた事例でも、特定の従業員が住宅ローンのための所得証明書や様々な証明書に勝手に会社印を押した事例がありました。「こんなの解雇は当たり前だろう」とお思いだと思いますが、そうとは限りません。以下の事例でも一審は会社の解雇は無効であると判断しました。

 

2 事案

宋小雪は2013年9月25日に北京W社に入社し、販売員を務めた。2019年2月1日、宋小雪は会社の許可を得ず、会社の公印を押した。監視ビデオによると宋小雪は部屋に入って引き出しの中で公印を見つけてから服のポケットから資料を取り出した。動画では宋小雪は監視カメラに背を向けており、動画からは宋小雪がどの資料に公印を押しているのか、何枚押したかを確認できなかった。2019年2月12日、会社は宋との労働契約を解除した。

なお、会社に公印使用管理制度があったが、従業員に周知したかどうかは不明であった。

 

3 判決内容

一審判決【会社敗訴】

「公印使用管理制度」は会社が一方的に作成したもので、ビデオは宋小雪がどの資料材料に印鑑を押したかどうか、会社が被った具体的な損害を証明できないため、会社の解雇が適法であるとは言えないと判断した。会社はこれに不服で、上訴した。

二審判決【会社勝訴】

二審判決は、会社は宋小雪が公印を押すことを許可しなかったのであるから、宋の行為は労働規律と職業道徳に深刻に違反し、会社の解雇は適法であると判断した。理由は以下の通りである。

本件では、会社が宋小雪に「公印使用管理制度」を公示したことを証明する十分な証拠はなく、同社は管理面で漏れがある。しかし、公印は法人の象徴であり、許可されていない中で押印することは決して許されないことである。10年余り働いた労働者として、宋小雪はこの労働規律と職業道徳を守るべきであった。宋小雪の行為により実際の損失が生じたか否かは解雇有効の条件とするべきではない。

以上から、本件は宋小雪が許可を得ずに公印を使用したものであり、これは労働規律と職業道徳に深刻に違反している。そのため、会社の解雇は有効である。

 

4 ビデオカメラの設置は必須

裁判所もさすがに最後はまともな判断を下しました。なお、この案件は、ビデオカメラによる録画映像があったことでから発覚し、証明できたものです。公印管理制度(規程)も社印使用名簿も作るべきですし、公印の管理も厳格に行うべきですが、やはり監視カメラがないと中国では証明が不可能です。残念ですが、日系企業中国法人では、工場のみならずオフィスでもビデオカメラの設置をお勧めする事例が増えています。

事件番号:(2020)京民申3874号(当事者仮名)