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企業会計準則第9号「従業員給付」において、従業員に付与される有給休暇は累積有給休暇と非累積有給休暇に分類されます。
・累積有給休暇…当期の有給休暇の権利を翌期以降に繰り越すことができる有給休暇
・非累積有給休暇…当期の有給休暇の権利を翌期以降に繰り越すことができない有給休暇
上記のうち、当期中に使用し切れず、翌期以降に繰越しされる「累積有給休暇」については、当期末にその金額を合理的に見積もり、会計上「未払従業員給付」として負債計上するケースがあります。
【設例】 ※企业会计准则及应用指南系列第十章 职工薪酬【例10‐3】より引用
前提条件:
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✔A社の従業員は1,000名。
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✔従業員は毎年5日間の有給休暇を取得できる。
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✔当期に未使用の有給休暇は翌期1年間のみ繰り越すことができる。1年を超過した未使用の有給休暇は権利失効する。
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✔従業員が有給休暇を使用する場合、まずは当期の有給休暇を使用し、不足する場合は、前年度から繰り越された有給休暇を使用することができる。
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✔2024年12月31日時点で、A社の従業員1名当たりの未使用有給休暇は2日。
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✔2025年の年次有給休暇使用見込みについて、全従業員(1,000名)のうち、950名は5日以下、50名は5日である。なお、当該50名はすべて管理人員で1名あたりの平均給与は500元/日とする。
※ 上記前提条件において、2024年度に負債計上すべき未使用有給休暇の金額は?
会計処理:
950名→2025年は、当期の有給休暇(5日)を使用し、2024年度から繰り越された有給休暇は失効する。
50名→2025年は、1名あたり当期の有給休暇5日と2024年度から繰り越された有給休暇1.5日(6.5日-5日)を使用する見込みである。
したがって、2024年度末時点で、75日 (50名×1.5日) の有給休暇に対して 37,500人民元 (500人民元×75日) の「未払従業員給付」(負債)を見積計上する。
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- 借:管理費用 37,500
- 貸:未払従業員給付——累積有給休暇 37,500
【実務上のポイント】
- ✔当該規定は企業会計準則(新準則)の規定であり、企業会計原則(旧準則)では累積有給休暇の負債計上は強制されていません。
- ✔日本で一般的に言われる「有給休暇引当金」と同義ですが、現在日本基準では有給休暇引当金の計上は強制されていません。
- ✔当該負債は見積計上であるため、対応する費用(上述設例の管理費用37,500)は、税務上(企業所得税)損金不算入となります。
- ✔実務上、金額僅少等につき負債計上を見送るケースも考えられますので、計上可否については監査法人と協議されることをお勧めします。